団地生活の隠れたヒーローとも言えるものがダストシュートでした。
これは団地っ子ならば、誰でも知っている生ごみを捨てる小さな入口です。
私の家は3階にありましたが、階段を下りて、すぐの踊り場にありました。このダストシュートは各階の踊り場にあったはずです。
ダストシュートの入口は、開けると、フタの裏が逆三角形(?)の受け口状をしており、そこに袋を置き、入り口を閉めると、そのまま落ちる仕掛けになっています。入口のサイズは大まかですが、約30センチ×約20センチ。銀色です。
袋入りの生ごみの落下先は、1階の強化樹脂製(?)の大きな受け箱でした。各階段の踊り場からストレートでストンとそこへ落ちるようになっていました。
大きな受け箱は焦げ茶色をしていて、1階には箱がすっぽりと入るコンクリート製のスペースがあって、この箱を出し入れできるぐらいの金属製のドアがありました。
生ごみ用の箱サイズは約1メートル四方の立方体の箱であり、週1回(?)ぐらいの割合で、定期的に清掃員が大きなドアを開けて中から箱を引き出して、清掃車まで音を立てながら引きずってゴミを入れていました。
私は子供の頃、たまたま清掃員が大きな箱を引き出して回収するところを何度か見たことがあります。汚れてもいいようにぶ厚いビニール製の前掛けをしていたように記憶しています。おぼろげですが、女性の方もいたような気がします。
まあ子供の頃ですし、生ごみの異臭もあるので、遠くからボーッと見ていたわけですが…。
時折、母親に言われて、生ごみをダストシュートへ捨てに行きました。
子供心にダストシュートの入口を開けると、その奥の暗闇が何があるのかわからず、ちょっと怖いような気もしたものです。
大人の視線で捉えると、このダストシュートという仕組みはよく考えられているなと、改めて思います。公団住宅での衛生的な生活を支えていたのが、こうした目に見えないダストシュートでした。だから隠れたヒーロー。
ある日、こんなことがありました。ちょうど私が1階の出入り口付近にいたら、「〇〇〇君」と向かい隣りのIさんのおばさんに呼ばれました。
「スズメがこの中にいるよ」とおばさん。
生ごみの箱を収めるスペースを指さしました。
金属のドアを開けて、中にいたスズメを捕まえたのです。
そもそもスズメがどうしてそんな中にいたのかわかりません。
スズメを入れた箱(?)ごといただいたわけですが、まあ何と言っても野生のスズメです。飼うこともできませんし、Iさんには悪いのですが、そんなにスズメに執着もなかったので、3階のうちへ持ち帰り、ベランダからスズメを放してやりました。
スズメは元気に飛んで行きました。