ここは武里団地9街区

丙午生まれの昭和回想

学研の科学と学習(下)

 前回の投稿で示したように学習研究社は東京都大田区に本社を置き、全国に54の支社を持つ一大出版社でした。その本社と支社のネットワーク、さらに学研コンパニオンの方が末端を構成し、学研の科学と学習の販売網が確立されていたと言えます。

 まさに子供市場に君臨する〝学研帝国〟というにふさわしいでしょう。
 あともう1つ指摘しておきたいことがあります。当たっているか的外れかわかりませんが、科学も学習も書店の店頭では販売されていませんでした。そのことの意味は大きかったと思います。言い換えると、通常では手に入らない科学と学習を取っている特別感のようなものがあったのも事実です。
 ライバル誌(?)である小学館の『1年生』や『4年生』などは店頭で販売していました。もちろん小学館の方も時々、読んでいましたが、誰でも手に入るものなので特別感はありませんでした。
 振り返ると、私の心の中に強くは意識されていませんでしたが、科学と学習を取っていることに、うっすらと特別感があったことは否定できません。
 私はさして学校の勉強ができませんでしたが、そんな私が今でもよかったと思うのは子供の頃に読書の習慣を身に付けたことでした。そのきっかけを与えてくれたのがポプラ社の「子どもの伝記全集」、そして学研の存在、特に読み物特集でした。
 私は『夏の読み物特集』が結構好きで、毎年夏に届くのを楽しみにしていました。この特集号は1年生なら『1年の読み物特集』、4年生なら『4年の読み物特集』というように学年が冠されていました。

昭和53年の『6年の読み物特集』。表表紙、背表紙、裏表紙。手元に唯一残る読み物特集である。想像力をかきたてられる表紙絵(Q街区所蔵)

昭和53年の『6年の読み物特集』の目次。多彩なジャンルの読み物が並ぶ

目次の続き

 私の古い確かな記憶ではすでに2年生の『読み物特集』を読んでいたので、早い時期から購読していたことがわかります。
 この読み物特集はいろいろなジャンルの児童向けの短編小説が掲載されていました。学園もの、家族もの、不思議な話、ヒューマンドラマ、伝記、SFなどなどです。

昭和53年の『6年の読み物特集』の中の黒沢玲子著・牧村慶子(絵)「旅人の木の下で」

 この本の中から選んで、それで夏休みの宿題となっている読書感想文を書いて提出したこともありました。

 最後に関連して学研の図鑑のことについて触れておきたいと思います。学研の科学と学習を取っていたことに伴い、親は学研の図鑑も購入してくれました。恐らく学研のコンパニオンを通じて購入していたのだと思います。この図鑑は次第に溜まって20冊近くになりました。しかし、私は図鑑をあまり開くこともなく、ほとんどお飾りでした。

 ところが、大場小学校3年5組に上がり、ひょんなことから同級生のT君(別稿「学研の図鑑」で登場)と友人となりました。T君は熱心な学研マニアであり、もちろん科学・学習の購読者であり、学研の図鑑も私より多い30冊近い数を持っていました。

 同級生のN君も学研の図鑑を20冊ぐらい持っており、T君とN君の3人でその話題で話したことがあります。ということはN君も科学と学習を購読していたのでしょう。

 T君のいいところは実際に図鑑を開き、それを知識として相当に蓄えていたことです。昆虫、爬虫類・両棲類、恐竜の名前、日本史の人物名など、たくさんよく知っていました。私も彼に影響されて遅まきながら学研の図鑑を読むようになりました。中でも日本の歴史(全5冊)は挿絵入りで楽しかったです。

 遥か遠い半世紀前に武里団地に住んでいた少年時代、ひたすら遊び回る一方、当時の読書から得たことは今でも生きる上での肥やしになっているように思います。