ここは武里団地9街区

丙午生まれの昭和回想

500円札の思い出

 

歩道橋の向こう側、左側角に交番がありました。私の手持ちの写真の中にはっきりと交番とわかる写真がなく、残念の限りです(2009年7月25日撮影、Q街区所蔵)

 春日部市立大場小3年生(昭和50年〈1975〉)だったある日のこと。私は3年5組の級友のS君と団地内を歩いていました。

 S君は9―11号棟、私は9―12号棟に住むお隣の号棟同士。
 2人して一体どの辺を歩いていたのかは覚えていません。恐らく9街区か近隣公園の近辺だろうと思われます。
 S君が何か落ちていると、道(あるいは芝生?)から何かを拾いました。

 それは財布でした。

 長財布だったのか半折の財布だったかもよく覚えていませんが、中を確認してみるとお札が入っていました。小3の私たちにとってはかなりの金額となります。
 私はびっくりしました。一瞬どうしようと思いましたが、S君は間髪空けずに「警察に届けよう」と言いました。
 その時、私はお金を拾ったら警察に届けることを改めて実感しました。そうしたことが自分の身に起きることを予想だにしてませんから、少し戸惑いつつS君に同行して、交番に向かいました。
 交番は7街区の向こう側、信号交差点を渡ってすぐの団地商店街1階角にありました。その並びに確か時計店もあったような気がします。
 S君は躊躇なく交番に入り、「財布を拾いました」と警官に話しました。男性の警官はS君と私を座らせ、拾った当事者のS君にのみ事情を聞きました。
 名前、住所、年齢、拾ったもの、拾った場所などが質問事項だったのだと思います。S君ははきはきと答え、警官は落とし物の調書を作成します。
 どのくらい時間が経過したのでしょうか。15分から30分ぐらいか。警官は確かに預かった旨を告げ、帰されたと思います。
 私は交番に入るのも、警官に接触するのも全く初めての体験。今までの日常とは全く異なる経験だったので、断片的ではあるけれど強く記憶に残りました。
 後日、落とし主が警察に現れ、無事に財布は引き取られたようです。そのことは私の母親から知らされました。そして紙袋に入ったお礼の一部(菓子か何か?)と封筒に入った500円札(肖像は岩倉具視)を渡されました。
 恐らく落とし主はS君のもとを訪れ、お礼と共に財布の金額の1割をS君に渡したのだと思います。そしてS君の母親が気を利かせて「一緒に交番に行ったのだから」とお礼と礼金のおすそ分けを私の母親に渡したのでしょう。
 私は500円札を見て、なんだかとても得をしたような気分になりました。いいことをしたんだなと感じました。